オレからキミへ、キミからオレへ。 つながれ、この気持ち。 Chain Reaction 陽も落ちて、辺りが暗くなった頃 立海テニス部の練習は終わりを迎える。 「は〜今日もよく頑張ったっす」 「暑ぃ…」 もうダメ、と寝そべっていると上から声が聞こえてきた。 「おつかれさま、切原くん」 ふと目を開けると、そこには先輩の顔があった。 慌てて身体を起こすと、思いっきり先輩とおでこがぶつかってしまった。 悶えている二人に、「何やってんだ」と笑いが渦巻く。 「いてて…すみません、先輩」 「大丈夫だよ。それより切原くん、はいお水」 ありがとっすと受け取り、水を飲もうと ペットボトルのフタを開けるが、なぜか視線を感じる。 「な、何すか?」 「赤くなっちゃってるね」 おでこに先輩の冷たい手が当たる。 近い、近いッス!先輩!! 「、放っておけ」 「赤也なら大丈夫だよ」 「そうですよ」 「日常茶飯事だ」 「気にするな」 「もっと強くやってもいいんじゃねえ?」 「プリッ」 次々とまくし立てられ、そう?とその場を後にする。 名残惜しそうに、後ろ姿を見送る赤也は先程とは違う視線を感じた。 『してやったり』と。 着替えを終えた部員たちは帰路につく。 「お待たせしました、先輩っ!」 切原はと帰る方向が同じなのを理由に、部活のある日は一緒に帰る。 何気ない話をしながら帰るだけ。しかもその時間はおよそ30分。 この時間だけは誰にも邪魔されない、2人だけの時間。 普段より、ゆっくり歩く。 それでもいつかは帰り着いてしまい、また明日となる。 いつもこの瞬間が嫌で。 「切原くん、いつもありがとう」 またね、と手を振る先輩に見送られ自分の家へと帰る。 どうしてこんなに好きなんだろう。 それは多分、初めて見たときから。 ◆◆◆◆◆◆ オレがテニス部に入ったときには、すでに先輩はマネージャーで。 幸村部長や真田副部長、柳先輩達にボロボロに負けたあの時。 「おつかれさま、切原くん」 「…………」 くやしくて、膝を抱えコートの隅に座っていたオレに 先輩は何も言わずに、タオルをかけてくれて ポンポンと頭を撫でてくれた。 「さっ、午後の練習始めよっか!」 顔をあげて視界に入った先輩の笑顔と差し出された手。 それからオレは先輩に惹かれていった。 ◆◆◆◆◆ 家に帰り、部屋へと入る。 ベッドに寝転がり、机の上の写真に目を向ける。 「先輩…」 翌朝、いつもより少し早めに登校する。 眠い目をこすりながら歩いていると、後ろから聞き慣れた声がした。 「おはよう、切原くん」 「先輩っ!おはようっす」 朝から会えるなんてこの時間に家出てラッキーと 心の中でガッツポーズをする。 「そうだ。今日、調理実習でクッキー作るんだけど 切原くん、良かったらいる?」 「………!」 おおきく頷くと、先輩は笑いながら「じゃあ、約束」と 指切りしよう、と小指を立てる。 繋がれた指が熱い。 「先輩、……っす」 「ん?何か言った?」 「先輩、好きっす」 「………」 もっともっと言いたいことがたくさんあるのに これしか出てこなくて。 触れていた指先の感触が消え、その代わりに手が繋がれていた。 「うん」と先輩は頷き、しっかりとオレの手を握っている。 「オレ、先輩の事が好きです」 繋がれた手から、伝わっていくような気がして先輩の手を握る。 「…知らなかった?私も、だよ」 顔をあげると、視界に入ったのはあの日と同じ、あの笑顔。 ぎゅっと、先輩を抱き締めるとちょっと震えてるのがわかる。 「…先輩もドキドキしてる?」 「うん…」 顔を見合わせ、思わず吹き出し笑い合う。 手をつないで歩くこの道のりがいつもよりも ずっとずっと違った景色に見える。 先輩も同じだったらいい。 「先輩、クッキー楽しみにしてるっす」 「わかった。頑張るね!」 「他のやつにあげたら嫌ですからね」 「はいはい」 オレから先輩へ。 先輩から、オレへ。 つながっていくこの気持ち。 これからもずっと、つながっていきますように。 あとがき 「Chain Reaction」=連鎖反応という意味だそうです。 間違ってたらごめんね、ごめんね〜! By sachi Back |